思い出とOutputと僕と

「震える天秤」を読み終えて

前作から染井為人の作品を読み始めて先日文庫本になった本作を手に取った。タイトルを見て想像した中身は裁判官や検察といった司法に関わる小説だった。しかしながら主人公である律はフリーのジャーナリストで、彼が追うのは高齢者ドライバーの事故だった。

律のジャーナリズムは良心で動いてるという。事件の全容がようやく分かった彼は自分の良心に基づいた行動を取った。良心とは一方面から見た正義であり、他方から見ればそれは私心であり悪である。彼の妻である里美が言った責任を取って辞めるなんて最低、という言葉も凄く印象的だった。背負って生きていくことが彼女の良心なのだろう。

解説にもあったがミステリらしからぬ、詳細な真実が分からないということに驚いた。自作も染井為人を読もう。