思い出とOutputと僕と

「正体」を読み終えて

しばらく読み終えた後に感想を書いていなかったため、久々の投稿。

本作は近頃よく手に取る染井為人の一作である。読み始めたのは染井為人が著者でレビュー数が最も多いというかなり安直な理由からではあったが非常に良かった。

ある事件で死刑判決を受けた少年が脱獄するところから物語は始まる。そのため少年がどのような人物でどのような凄惨な事件を引き起こしたのか、や少年の心情が全く描かれないまま少年が逃げた先で出会う人達の目線で本作は進んでいく。読者である私は少年に関わった彼らと同じように少年と彼が引き起こした事件に疑問を抱きだす。しかしながら全てが間違いだと気づく頃にはすでに遅く、さらにそれが世間に伝わった時には彼がいないということに世知辛さと何とも言えない喪失感を感じた。

端的に言うと非常に面白かった。